「江戸の子守唄」(御宿かわせみ二)
平岩弓枝
文春文庫

2014.8.5
江戸の子守唄(子供を連れた、芸人崩れと思われる男、どこか荒んだ感じの女の客が子供を置いて夜逃げ)、お役者松(東吾が夜の縁日でお役者松と云うスリと間違われる)、迷子石(おそくになって始めて恵まれた女の子が迷子になり殺されてしまった伽師が、神経を病み毎夜、辻斬りを)、幼なじみ(植木屋の若い男の幼馴染の女が、奉公先から三百両と云う大金を持ち逃げする)、宵節句(押し入った先では皆殺しをする盗賊仲間に、東吾の昔の突きの名手と云われた修業仲間と思われる男が)、ほととぎす鳴く(油問屋、山崎屋の主人が、味噌汁に毒物をぶっこまれたり、川へ突き落されたり、命が狙われる)、七夕の客(かわせみに、毎年7月7日の七夕に、決まって向かい合わせの部屋に泊まる四十女と二十ぐらいの男の客)、王子の滝(その昔、東吾を養子に欲しいとの話のあった札差の家付娘が、名所王子の滝で殺された)の8短編。

文庫で30ページ強の短編にもかかわらず、それぞれが納得のいく展開で飽きさせない。かわせみ女将のるいの、八丁堀の与力の家の冷飯食いの東吾への想いがいじらしく読者の心を離さない。生きていく事の切なさが強く心にしみる「迷子石」、「幼なじみ」、「七夕の客」等好短編。 
「芙蓉の人」
新田次郎
文春文庫

2014.8.12
明治28年、正確な天気予報の為、野中至は、富士山頂に気象観測所を設置し、気象観測の為、観測小屋に一人籠る。零下20度を越える厳寒のなか、二時間おきの気象観測と云う死を賭けての仕事は、一人では無理と、妻、千代子は、後を追って富士山頂に登る。

子供と水杯までして、全てを夫に捧げる妻としての務めを果す女性の情熱、気概、勇気、忍耐が綴られた感動のノンフィクション。

女の鏡、妻の鏡とか、明治の女の代表とか、そんなことではなく、妻として夫を支えたいと云う一途な気持には感動する。これこそ幸せな人生の送り方なのだろう。 
「マスカレード・ホテル」
東野圭吾
集英社文庫

2014.8.19


不可解な暗号が残された連続殺人事件が起き、その暗号から、第四の殺人が、ホテルコロシア東京で起きると解き明かされる。潜入捜査でホテルマンに化けた刑事、新田浩介は、ホテルでの教育担当となったホテルフロントの山岸尚美と共に、事件解決に挑む。

ダラダラとした話の発展性がない退屈極まりない展開。圭吾さん、多作の弊害が現れていますよ。残念だが、名前を汚すだけの作品。売れない事を予想したのか、出版社は、トリック暴きのキャンペーンを。ふざけた話。  


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読書ノート

(本タイトルのフォント青色の書籍が、私の好きな「100冊の本」候補)

2014.8月