読書ノート

(本タイトルのフォント青色の書籍が、私の好きな「100冊の本」候補)

2014.10月

「シェエラザード」上・下
浅田次郎
講談社文庫

2014.10.6
第二次大戦中、日米間の協定で安全航行を保障されていた貨客船「阿波丸」が米軍戦艦に撃沈された阿波丸事件をモチーフに書かれた小説。昭和20年、台湾海峡で二千人の民間人もろとも撃沈された弥勒丸の引き上げの話が持ち込まれ、その関係者が次々と殺されて物語は始まる。巨大裏組織、特務機関が絡んで息つく暇ない緊迫の展開。十字架を背負って生きてきた謎の老人により、50年の沈黙が破られ、悲劇の真相が語られる。

様々に絡みあった登場人物が、ものの見事に結ばれる物語の展開が素晴らしい。とにもかくにも問答無用に面白い。
「狂人遺書」
角川文庫
坂口安吾

2014.10.14
豊臣秀吉の、「オレがミセシメになる日の恥をいまわの恃みにしたい」と書き残した遺言書。巷では、オレを狂人と噂していることも知っている。子が死んだので発狂して朝鮮に出兵したと大名どもまで心に思うている事も察していると。むやみに威勢をみせたがるオレの虚勢と見栄が破滅を生んだのだと秀吉に言わせている。坂口安吾の繊細な分析力が横溢している。  
「鏨師」(たがねし)
平岩弓枝
文春文庫

2014.10.24  
鏨師、つんぼ、神楽師他、初期の短編集5編 。
「鏨師」
1959年直木賞受賞作品。無銘の刀を高値で売りさばく為、偽銘切りの業を身につけた刀鍛冶上がりの鑢(やすり)の目切り師と、刀剣商の話。「中心(なかご)に朱墨で書いた偽名の文字に最初の細鏨を下す刹那、鏨師の病み呆けた充血した瞳に閃く」との思わせぶりな言い回しが小気味良い結末に繋がる。溜飲が下がる思い。

「つんぼ」
煮立ってる鉄瓶をぶつけて煮湯をあびせる根っからの悪婆の怖い話。

「神楽師」
命のありったけを叩きこんで育てた子が死んでしまう話。

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