「京都綺談」 実業之日本社 2015.9.5 京の都を舞台にした、妖しく、哀しい、切ない8短編集。但し、読めるのは 「藪の中」と「高瀬舟」ぐらい。 光悦殺し(赤江瀑)光悦屋敷であった光悦寺にまつわるミステリー 藪の中(芥川龍之介) 夫のまえで盗人の手ごめに遭った女房と、死骸で発見された夫の哀しい哀しい物語。 強姦と殺人という事件をめぐって4人の目撃者と女房、盗人、霊能者を介しての夫、それぞれの食い違った証言で事件が語られる。 二人の男に恥を見せるのは、死ぬよりつらいとの女房の言葉が切ない。 構成の巧みさ、筋運びの巧さで読んでいてわくわくする。小説の素晴らしさを実感。何度でも読みたい。このミステリーに勝るミステリーは無いだろう。 決して忘れられない夜(岸田るり子) 不愉快な不気味な怪奇談 躑躅幻想(柴田よしき)鴨川沿いのホテルから望む比叡山にまつわるミステリー 女体消滅(澁澤龍彦)双六で鬼から美女を勝ち取った男の卑猥な話 廃屋(高木 彬光) 哲学の小径に近い、郵便配達夫と友人二人が縊死した荒ら屋が舞台 西陣の蝶(水上勉)八条通り六孫王神社境内での殺人事件。哀切漂う結末。この人は暗い話が多い。 高瀬舟(森鴎外)罪人を大坂へと護送する船の中の、足るを知った罪人の話 |
「犬」 中勘助 筑摩書房 2015.9.10 町を侵略した異教徒の若い隊長に思いを寄せ、その子を宿した女性に狂ったバラモン僧が、呪法の力で女と己れを犬に化身させ、肉欲妄執の世界に溺れ込む壮絶な話。 中勘助が、こんな小説を書くのだと驚愕する。 |
「命売ります」 三島由紀夫 ちくま文庫 2015.9.20 自殺に失敗した男が、「命売ります」と新聞広告を出したことで、さまざまな騒動が起こる物語。ストーリーの最後は、最初の命の買人に戻っていくと云う巧みな展開で、一気に読める愉快小説。 三島自死する2年前の作品で、随所に三島の死生観が伺える貴重な作品。 |
(本タイトルのフォント青色の書籍が、もう一度読みたい本
2015.9月